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論経』に説かく、劫初よりこのかた、もろもろの悪王ありて、国位を貪るがゆえに、その父を殺害せること一万八千なり。未だむかしにも聞かず、無道に母を害することあるをば。王いまこの殺逆の事をなさば、刹利種を汚してん。臣聞くに忍びず。これ栴陀羅なり。宜しく此に住すべからず。」時に二の大臣、この語を説き竟りて、手をもって剣を按えて、却行して退く。時に阿闍世、驚怖し惶懼して、耆婆に告げて言わく、「汝、我がためにせざらんや」と。耆婆、白して言さく、「大王、慎みて母を害することなかれ」と。王この語を聞きて、懴悔して救けんことを求む。すなわち剣を捨てて、止りて母を害せず。内官に勅語し、深宮に閉置して、また出ださしめず。
 時に韋提希、幽閉せられ已りて、愁憂憔悴す。はるかに耆闍崛山に向かいて、仏の為に礼を作して、この言を作さく、「如来世尊、在昔の時、恒に阿難を遣わして来らしめて、我を慰問したまいき。我いま愁憂す。世尊は威重にして、見たてまつること得るに由なし。願わくは目連と尊者阿難を遣わして、我がために相見せしめ

漢文

有諸悪王、貪国位故、殺害其父、一万八千。未曾聞有 無道害母。王今為此 殺逆之事、汚刹利種。臣不忍聞。是栴陀羅。不宜住此。時二大臣、説此語竟、以手按剣、却行而退。時阿闍世、驚怖惶懼、告耆婆言。汝不為我耶。耆婆白言大王、慎莫害母。王聞此語、懺悔求救。即便捨剣、止不害母。勅語内官、閉置深宮、不令復出。
時韋提希、被幽閉已、愁憂憔悴。遥向耆闍崛山、為仏作礼、而作是言。如来世尊、在昔之時、恒遣阿難、来慰問我。我今愁憂。世尊威重、無由得見。願遣目連 尊者阿難、与我相見。作是語已、