巻次 信 269頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 に何の罪かあるべき。すなわち前んで取らんと欲するに、すなわち神通を失えり。還りて己身を見れば王舎城にあり。心に慙愧を生ずるに、また善見太子を見ることあたわず。またこの念を作さく、我いま当に如来の所に往至して、大衆を求索すべし、と。仏もし聴さば、我当に意に随いて、教えてすなわち舎利弗等に詔勅すべし、と。その時に提婆達多、すなわち我が所に来りてかくのごときの言を作さく、唯願わくは如来、この大衆をもって我に付嘱せよ、我当に種種に法を説きて、教化してそれをして調伏せしむべし、と。我、痴人に言わく、舎利弗等、大智を聴聞して、世に信伏するところなり、我なお大衆をもって付嘱せじ。いわんや汝痴人、唾を食らう者をや、と。時に提婆達多、また我が所においてますます悪心を生じて、かくのごときの言を作さく、瞿曇、汝いままた大衆を調伏すといえども、勢また久しからじ。当に見に磨滅すべし、と。この語を作し已るに、大地即時に六反震動す。提婆達多、すなわちの時に地に躄れて、その身の辺より大暴風を出だして、もろもろの塵土を吹きてこれを汚坌す。提婆達多悪相を見已りて、またこの言を作さく、もし我、この身、現世に必ず阿鼻地獄に入らば、我が悪、当にかくのごときの大悪を報うべし、と。時に提婆達多、すなわち起ちて、善見太子の所に往至す。善見見已りてすなわち聖人に問わく、何がゆえぞ、顔容憔悴して憂の色あるや、と。提婆達多言わく、我常にかくのごとし、汝知らずや、と。善見答えて言わく、願わくはその意を説くべし。何の因縁あってか爾る、と。提婆達の言わく、我いま汝がために極めて親愛を成す。外人汝を罵りて、もって非理とす。我この事を聞くに、あに憂えざることを得んや、と。善見太子、またこの言を作さく、国の人、いかんぞ我を罵辱する、と。提婆達の言わく、国の人汝を罵りて「未生怨」とす。善見また言わく、何がゆえ 紙面画像を印刷 前のページ p269 次のページ 第二版p305・306へ このページの先頭に戻る