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しそうらわば、その身ひとりこそ、地獄にもおち、天魔ともなりそうらわめ、よろずの念仏者のとがになるべしとは、おぼえずそうろう。よくよく、御はからいどもそうろうべし。なおなお、念仏せさせたまうひとびと、よくよくこの文を御覧じとかせたまうべし。あなかしこ、あなかしこ。

九月二日     親鸞
念仏人々御中へ

(一〇) ふみかきてまいらせそうろう。このふみを、ひとびとにもよみてきかせたまうべし。遠江の尼御前の御こころにいれて御沙汰そうろうらん、かえすがえすめでたく、あわれにおぼえそうろう。よくよく、京よりよろこびもうすよしをもうしたまうべし。信願坊がもうすよう、かえすがえす不便のことなり。わるき身なればとて、ことさらにひがごとをこのみて、師のため善知識のために、あしきことを沙汰し、念仏のひとびとのために、とがとなるべきことをしらずは、仏恩をしらず、よくよくはからいたまうべし。また、ものにくるうて死にけんひとのことをもちて、信願坊がことを、よしあしともうすべきにはあらず。念仏するひとの死にようも、身よりやまいをするひとは、往生のようをもうすべからず。こころよりやまいをするひとは、天魔ともなり、地獄にもおつることにてそうろうべし。こころよりおこるやまいと、身よりおこるやまいとは、かわるべければ、こころよりおこりて死ぬるひとのことを、よくよく御はからいそうろうべし。信願坊がもうすようは、凡夫のならいなれば、わるきこそ本なればとて、おもうまじきことをこのみ、身にもすまじきことをし、口にもいうまじきことをもうすべきように、もうされそうろうこそ、信願坊がもうしようとはこころえずそうろう。