巻次 - 618頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 わたらせ給え、疑い思いまいらせぬうえ、同じ事ながら、益方も御臨終にあいまいらせて候いける、親子の契と申しながら、深くこそおぼえ候えば、うれしく候う、うれしく候う。 又、この国は、昨年の作物、殊に損じ候いて、あさましき事にて、おおかた命生くべしともおぼえず候う中に、所ども変わり候いぬ。一所ならず、益方と申し、又おおかたは頼みて候う人の領ども、みなかように候ううえ、おおかたの世間も損じて候う間、中々、とかく申しやるかたなく候う也。かように候うほどに、年来候いつるやつばらも、男二人正月失せ候いぬ。何として、物を作るべきようも候わねば、いよいよ世間たのみなく候えども、いくほど生くべき身にても候わぬに、世間を心苦しく思うべきにも候わねども、身一人にて候わねば、これらがあるいは親も候わぬ小黒の女房の女子、男子、これに候ううえ、益方が子どもも、ただこれにこそ候えば、何となく、母めきたるようにてこそ候え。いずれも命もありがたきようにこそおぼえ候え。 この文ぞ、殿の比叡の山に堂僧つとめておわしましけるが、山を出でて、六角堂に百日こもらせ給いて、後世の事いのり申させ給いける九十五日のあか月の、御示現の文なり。御覧候えとて、書きしるして参らせ候う。(四) この文を書きしるしてまいらせ候うも、生きさせ給いて候いしほどは、申しても要候わねば、申さず候いしかど、今は、かかる人にてわたらせ給いけりとも、御心ばかりにもおぼしめせとて、記してまいらせ候う也。よく書き候わん人に、よく書かせて、持ちまいらせ給うべし。又、あの御影の一幅、欲しく思いまいらせ候う也。幼く、御身の八にておわしまし候いし年の四月十四日より、風邪大事におわしまし候いし時の事ど 紙面画像を印刷 前のページ p618 次のページ 第二版p756・757へ このページの先頭に戻る