巻次 - 739頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 念を凝らす。鎮に、明師に逢うて大小の奥蔵を伝え、広く諸宗を試みて甚深の義理を究む。しかれども、色塵声塵、猿猴の情、なお忙わしく、愛論見論、痴膠の憶い、いよいよ堅し。断惑証理、愚鈍の身成じ難く、速成覚位、末代の機覃び叵し。よりて、出離を仏陀に誂え、知識を神道に祈る。しかるあいだ、宿因多幸にして、本朝念仏の元祖黒谷聖人に謁し奉りて、出離の要道を問答す。授くるに浄土の一宗をもってし、示すに念仏の一行をもってす。自爾このかた、聖道難行の門を閣きて浄土易行の道に帰し、忽ちに、自力の心を改めて、偏に、他力の願に乗ず。自行化他、道綽の遺誡を守り、専修専念、善導の古風に任す。見聞の道俗随喜を致し、遠近の緇素、皆発心す。ここに、祖師、西土の教文を弘めんが為に、遙かに東関の斗藪を跂てたまう。暫く常州筑波山の北の辺に逗留し、貴賤上下に対して末世相応の要法を示す。初めに、疑謗を成す輩、瓦礫荊棘の如くなりしかども、遂に改悔せしむるの族、稲麻竹葦に同じ。皆邪見を翻して、悉く正信を受け、共に偏執を止めて還りて弟子と為る。おおよそ、訓えを受くる徒衆、当国に余り、縁を結ぶ親疎諸邦に満てり。謗法闡提の輩なりといえども、彼の教化を聞く者、覚悟花鮮やかに、愚痴放逸の類なりといえども、其の諷諫を得る者、惑障雲霽る。喩えば木石の縁を待ちて火を生じ、瓦礫の𨥉を磨りて珠を為すがごとし。甚深の行願不可思議なる者か。方に今、念仏修行の要義、区なりといえども、他力真宗の興行はすなわち、今師の知識より起こり、専修正行の繁昌はまた、遺弟の念力より成ず。流を酌んで本源を尋ぬるに、偏に是祖師の徳なり、須らく仏号を称して師恩を報ずべし。頌に曰わく、「若非釈迦勧念仏 弥陀浄土何由見 紙面画像を印刷 前のページ p739 次のページ 第二版p896・897へ このページの先頭に戻る