巻次 信 254頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 を見ることなけん」と。大臣また言わく、「やや願わくは大王、しばらく愁怖することなかれ。法に二種あり、一つには出家、二つには王法なり。王法は、いわく、その父を害せり、すなわち王国土これ逆なりと云うといえども、実に罪あることなけん。迦羅羅虫のかならず母の腹を壊りて、しかして後すなわち生ずるがごとし。生の法かくのごとし。母の身を破るといえども、実にまた罪なし。騾腹懐妊等またかくのごとし。治国の法、法としてかくのごとくなるべし。父兄を殺すといえども、実に罪あることなけん。出家の法は、乃至蚊蟻を殺するもまた罪あり。乃至 王の言うところのごとし、「世に良医の身心を治する者なけん」と。いま大師あり、「末伽梨拘賖梨子」と名づく。一切知見して衆生を憐愍すること、赤子のごとし。すでに煩悩を離れて、よく衆生の三毒の利箭を抜く、と。乃至 この師いま王舎大城にいます。やや願わくは大王、その所に往至して、王もし見ば衆罪消滅せん」と。時に王答えて言わく、「審かによくかくのごとき我が罪を滅除せば、我当に帰依すべし」と。 また一の臣あり、名づけて「実徳」と曰う。また王の所に到りて、すなわち偈を説きて言わく、「大王、何がゆえぞ身の瓔珞を脱ぎ、首の髪蓬乱せる。乃至かくのごときなるや、と。乃至 これ心痛とやせん、身痛とやせん。」王すなわち答えて言わく、「我いま身心あに痛まざることを得んや。我が父先王、慈愛仁惻して特に見て矜念せり、実に辜なきに、往きて相師に問う。相師答えて言さく、「この児生まれ已りて定んで当に父を害すべし」と。この語を聞くといえどもなお見て瞻養す。むかし智者のかくのごときの言を作ししを聞きき。「もし人、母と通じて、および比丘尼を汚し、僧祇物を偸み、無上菩提心を発せる人を殺し、およびその父 紙面画像を印刷 前のページ p254 次のページ 第二版p288・289へ このページの先頭に戻る