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王舎城の中に在す。惟願わくは大王、崛駕して彼に往け。是の師、身心を療治せしむべし」と。
 時に王答えて言わまく、「審らかに能く是くの如き我が罪を滅除せば、我、当に帰依すべし」と。
 復た一の臣有り、名づけて「蔵徳」と曰う。復た王の所に往きて是の言を作さく、「大王。何故ぞ面貌憔悴して屑口乾燋し、音声微細なるやと。乃至 何の苦しむ所あってか、身痛とやせん、心痛とやせん」と。
 王、即ち答えて言わく、「我今、身心、云何ぞ痛まざらん。我、痴盲にして慧目有ること無し。諸の悪友に近づきて、為れ善く提婆達多悪人の言に随いて、正法の王に横に逆害を加す。我、昔曾て智人の偈説を聞きき。

若し父母、仏及び弟子に於いて、不善の心を生じ、悪業を起こさん。
是くの如きの果報、阿鼻獄に在りと。
是の事を以ての故に、我、心怖して大苦悩を生ぜしむと。

又、良医の救療を見ること無けん」と。
 大臣、復た言さく、「惟願わくは大王、且く愁怖すること莫かれ。法に二種有り。一には出家、二には王法なり。王法は、謂わく、其の父を害せり、則ち王国土、是れ逆なりと云うと雖も、実に罪有ること無けん。迦羅羅虫の、要ず母の腹を壊りて、然うして後、乃ち生ずるが如し。生の法、是くの如し。母の身を破すと雖も、実に亦罪無し。騾腹懐妊等、亦復是くの如し。治国の法、