巻次
255頁
表示設定
ブックマーク
表示設定
文字サイズ
書体
  • ゴシック
  • 明朝
カラー
テキスト情報
本文
画像情報
画像情報
本文

を殺せん。かくのごときの人は、必定して当に阿鼻地獄に堕すべし」と。我今身心あに痛まざることを得んや。」大臣また言わく、「やや願わくは大王、また愁苦することなかれ、と。乃至 一切衆生みな余業あり。業縁をもってのゆえにしばしば生死を受く。もし先王に余業有らしめば、王今これを殺せん、竟に何の罪かあらん。やや願わくは大王、意を寛にして愁うることなかれ。何をもってのゆえに、もし常に愁苦すれば、愁ついに増長す。人眠を喜めば、眠すなわち滋く多きがごとし。婬を貪し酒を嗜むも、またかくのごとし。」乃至 「刪闍邪毘羅胝子」。
 また一の臣あり、「悉知義」と名づく。すなわち王の所に至りて、かくのごときの言を作さく。乃至 王すなわち答えて言わまく、我今身心あに痛なきことを得んや。乃至 先王辜なきに、横に逆害を興ず。我またかつて智者の説きて言いしを聞きき。「もし父を害することあれば、当に無量阿僧祇劫において、大苦悩を受くべし」と。我今久しからずして、必ず地獄に堕せん。また良医の我が罪を救療することなけん、と。大臣すなわち言さく、やや願わくは大王、愁苦を放捨せよ。王聞かずや、むかし王ありき、名づけて「羅摩」と曰いき。その父を害し已りて王位を紹ぐことを得たりき。跋提大王・毘楼真王・那睺沙王・迦帝迦王・毘舎佉王・月光明王・日光明王・愛王・持多人王、かくのごときらの王、みなその父を害して王位を紹ぐことを得たりき。しかるに一として王の地獄に入る者なし。いま現在に、毘瑠璃王・優陀邪王・悪性王・鼠王・蓮華王、かくのごときらの王、みなその父を害せりき。ことごとく一として王の愁悩を生ずる者なし。地獄・餓鬼・天中と言うといえども、誰か見る者あるや。大王、ただ二つの有あり、一つには人道、二つには畜生なり。この二つあり