巻次 信 256頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 といえども、因縁生にあらず、因縁死にあらず。もし因縁にあらずは、何者か善悪あらん。やや願わくは大王、愁怖を懐くことなかれ。何をもってのゆえに、もし常に愁苦すれば、愁ついに増長す。人眠を喜めば、眠すなわち滋く多きがごとし。婬を貪し酒を嗜むも、またかくのごとし、と。乃至 「阿耆多翅舎欽婆羅」。 また大臣あり、名づけて「吉徳」と曰う。乃至 地獄と言うは、何の義ありとかせん、と。臣当にこれを説くべしと。「地」は地に名づく、「獄」は破に名づく。「地獄」を破せんに罪報あることなけん。これを「地獄」と名づく。また「地」は人に名づく、「獄」は天に名づく。その父を害するをもってのゆえに、人天に到らん。この義をもってのゆえに、婆蘇仙人唱えて言わく、「羊を殺して人天の楽を得、これを「地獄」と名づく」と。また「地」は命に名づく、「獄」は長に名づく。殺生をもってのゆえに寿命の長きを得。かるがゆえに「地獄」と名づく。大王、このゆえに当に知るべし。実に地獄なけん、と。大王、麦を種えて麦を得、稲を種えて稲を得るがごとし。地獄を殺しては、還りて地獄を得ん。人を殺害しては、還りて人を得べし。大王、今当に臣の所説を聴くに、実に殺害なかるべし、と。もし有我ならば実にまた害なし。もし無我ならばまた害するところなけん。何をもってのゆえに。もし有我ならば常に変易なし。常住をもってのゆえに、殺害すべからず。不破・不壊・不繫・不縛・不瞋・不喜は、虚空のごとし。いかんぞ当に殺害の罪あるべき。もし無我ならば、諸法無常なり。無常をもってのゆえに、念念に壊滅す。念念に滅するがゆえに、殺者・死者、みな念念に滅す。もし念念に滅せば、誰か当に罪あるべきや。大王、火、木を焼くに、火すなわち罪なきがごとし。斧、樹を斫るに、斧また罪なきがごとし。鎌、草を刈るに、鎌実に罪なきがごとし。刀、人を殺すに、刀実に人にあらず、 紙面画像を印刷 前のページ p256 次のページ 第二版p291・292へ このページの先頭に戻る