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して王の愁悩を生ずる者無し。地獄・餓鬼・天中と言うと雖も、誰か見る者有るや。大王。唯、二の有有り。一には人道、二には畜生なり。是の二有りと雖も、因縁生に非ず、因縁死に非ず。若し因縁に非ずは、何者か善悪有らん。惟願わくは大王、愁怖を懐くこと勿れ。何を以ての故に。若し常に愁苦すれば、愁、遂に増長す。人、眠を喜めば、眠則ち滋く多きが如し。婬を貪し酒を嗜むも亦復是くの如し」と。乃至 「阿耆多翅金欽婆羅。」
 復た大臣有り、名づけて「吉徳」と曰う。乃至 「「地獄」と言うは、何の義有りとかせんと。臣、当に之を説くべしと。「地」は地に名づく、「獄」は破に名づく。地獄を破せん、罪報有ること無けん。是れを「地獄」と名づく。又復「地」は人に名づく、「獄」は天に名づく。其の父を害するを以ての故に、人天に到らん。是の義を以ての故に、婆蘇仙人、唱えて言わく、「羊を殺して人天の楽を得く。」是れを「地獄」と名づく。又復「地」は命に名づく、「獄」は長に名づく。彼の寿命の長を殺するを以ての故に「地獄」と名づく。大王。是の故に当に知るべし、実に地獄無けんと。大王。麦を種えて麦を得、稲を種えて稲を得るが如し。地獄を殺しては、還りて地獄を得ん。人を殺害しては、還りて人を得べし。大王。今、当に臣の所説を聴くに、実に殺害無かるべしと。若し有我ならば、実に亦害無し。若し無我ならば、復た害する所無けん。何を以ての故に。若し有我ならば、常に変易無し。常住を以ての故に殺害すべからず。不破・不壊・不繫・不縛・不瞋・不喜は、虚空の猶如し。云何ぞ当に殺害の罪有るべき。若し無我ならば諸法無常なり。無常を以ての故に念念に壊滅す。