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身心、豈に痛まざることを得んや。」
 大臣、復た言さく、「惟願わくは大王、且た愁苦すること莫かれと。乃至 一切衆生、皆、余業有り。業縁を以ての故に、数数生死を受く。若し先生に余業有らしめば、王、今、之を殺せん。竟に何の罪か有らん。惟願わくは、大きに、王、意を寛かにして、愁うること莫かれ。何を以ての故に。若し常に愁苦すれば、愁、遂に増長す。人、眠を喜めば、眠則ち滋く多きが如し。婬を貪し酒を嗜むも、亦復是くの如し。」乃至 「刪闍耶毘羅肱子。」
 復た一の臣有り、「悉知義」と名づく。即ち王の所に至りて是くの如きの言を作さく、乃至
 王、即ち答えて言わまく、「我今、身心、豈に痛無きを得んや。乃至 先王、辜無きに、横に逆害を興ず。我、亦曾て智者説きて言いしを聞きき。「若し父を害すること有れば、当に無量阿僧祇劫に於いて大苦悩を受くべし」と。我今、久しからずして、必ず地獄に堕せん。又、良医の我が罪を救療すること無けん」と。
 大臣、即ち言さく、「惟願わくは大王、愁苦を放捨せよ。王、聞かずや。昔者、王有りき。名づけて「羅摩」と曰いき。其の父を害し已りて王位を紹ぐことを得たりき。跋提大王・毘楼真王・那睺沙王・迦帝迦王・毘舎佉王・月光明王・日光明王・愛王・持多人王、是くの如き等の王、皆、其の父を害して王位を紹ぐことを得たりき。然るに一として王の地獄に入る者無し。於今現在に、毘瑠璃王・優陀邪王・悪性王・鼠王・蓮華王、是くの如き等の王、皆、其の父を害せりき。悉く一と