巻次 巻下 58頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 漢文 画像情報 画像情報 本文 寿楽極まりあることなし。 然るに世人、薄俗にして共に不急の事を諍う。この劇悪極苦の中において身の営務を勤めて、もって自ら給済す。尊もなく卑もなし。貧もなく富もなし。少長男女共に銭財を憂う。有無同然なり。憂思適に等し。屛営愁苦して、念いを累ね慮りを積みて、心のために走せ使いて、安き時あることなし。田あれば田を憂う。宅あれば宅を憂う。牛馬六畜・奴婢・銭財・衣食・什物、また共にこれを憂う。思いを重ね息を累みて、憂念を愁怖す。横に非常の水火・盗賊・怨家・債主のために焚漂劫奪せられ消散し磨滅す。憂毒忪忪として解くる時あることなし。憤りを心中に結びて憂悩を離れず。心堅く意固く、適に縦捨することなし。あるいは摧砕に坐して、身亡び命終われば、これを棄捐して去りぬ。誰も随う者なし。尊貴豪富もまたこの患えあり。憂懼万端にして勤苦かくのごとし。もろもろの寒熱を結びて痛みと共に居す。貧窮下劣にして困乏して常に無けたり。田なければまた憂えて田あらんと欲う。宅なければまた憂えて宅あらんと欲う。牛馬六畜・奴婢 漢文 極。然世人薄俗 共諍不急之事。於此劇悪 極苦之中、勤身営務、以自給済。無尊無卑。無貧無富。少長男女、共憂銭財。有無同然。憂思適等。屛営愁苦、累念積慮、為心走使、無有安時。有田憂田。有宅憂宅。牛馬六畜 奴婢銭財 衣食什物、復共憂之。重思累息、憂念愁怖。横為非常 水火盗賊 怨家債主、焚漂劫奪、消散磨滅。憂毒忪忪、無有解時。結憤心中、不離憂悩。心堅意固、適無縦捨。或坐摧砕、身亡命終、棄捐之去。莫誰随者。尊貴豪富、亦有斯患。憂懼万端、勤苦若此。結衆寒熱、与痛共居。貧窮下劣、困乏常無。無田亦憂、欲有田。無宅亦憂、欲有宅。無牛馬六畜 奴婢銭財 衣食什物、亦憂 紙面画像を印刷 前のページ p58 次のページ 第二版p62・63へ このページの先頭に戻る