巻次 - 624頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 では候わず。ただ犬のようにてこそ候えども、今年になり候えば、あまりにもの忘れをし候いて、耄れたるようにこそ候え。さても、昨年よりは、よに恐ろしき事ども多く候う也。又、すりいのものの便に、綾のきぬ給びて候いし事、申すばかりなくおぼえ候う。今は時日を待ちて居て候えば、これをや最後にて候わんずらんとのみこそおぼえ候え。たふしまでもそれより給びて候いし綾の小袖をこそ、最後の時のと思いて持ちて候え。世にうれしくおぼえ候う。きぬの表も、未だ持ちて候う也。又、公達の事、世にゆかしく、うけ給わりたく候う也。上の公達の御事も、世にうけ給わりたくおぼえ候う。あわれ、この世にて、いま一度見まいらせ、又、見えまいらする事候うべき。わが身は極楽へただ今に参り候わんずれ。なに事も暗からずみそなわしまいらすべく候えば、かまえて御念仏申させ給いて、極楽へ参り合わせ給うべし。なおなお、極楽へ参り合いまいらせ候わんずれば、なにごとも暗からずこそ候わんずれ。又、この便は、これに近く候うみこの甥とかやと申すものの便に申し候う也。あまりに暗く候いて、こまかならず候う。又、かまえて確か□らん便には、綿すこし給び候え。おわりに候う衛門入道の便ぞ確かの便にて候うべき。それもこのところに□□ることの候うべきやらんと聞き候えども、いまだ披露せぬ事にて候う也。又、光寿御前の修行に下るべきとかや仰せられて候いしかども、これへは見えられず候う也。又、若狭殿の今はおとなしく年寄りておわし候うらんと、世にゆかしくこそおぼえ候え。かまえて、念仏申して、極楽へ参り合わせ給えと候うべし。なによりもなによりも、公達の御事こまかに仰せ候え。承わりたく候う也。一昨年やらん生まれておわしまし候いけるとうけ給わり候いしは、それもゆかしく思いまいらせ候う。又、それへ参らせ候わんと申し候いし女の童も、一年の大温病に多 紙面画像を印刷 前のページ p624 次のページ 第二版p763・764へ このページの先頭に戻る