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上末
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々は、わがまいらん浄土へはよもまいらせたまわじ。よくよくこころえらるべき事なり」と云々 ここに、めんめんしたをまき、くちをとじてやみにけり。

(絵)

 御弟子入西房、聖人 親鸞 の真影をうつしたてまつらんとおもうこころざしありて、日来をふるところに、聖人そのこころざしあることを鑑みて、おおせられてのたまわく、「定禅法橋 七条辺に居住 にうつさしむべし」と。入西房鑑察のむねを随喜して、すなわちかの法橋を召請す、定禅左右なくまいりぬ。すなわち、尊顔にむかいたてまつりて、申していわく、「去夜、奇特の霊夢をなん感ずるところなり。その夢中に拝したてまつるところの聖僧の面像、いまむかいたてまつる容貌、すこしもたがうところなし」といいて、たちまちに随喜感歎の色ふかくして、みずからその夢をかたる。「貴僧二人来入す。一人の僧のたまわく、「この化僧の真影をうつさしめんとおもうこころざしあり。ねがわくは禅下筆をくだすべし」と。定禅問いていわく、「かの化僧たれ人ぞや。」くだんの僧いわく、「善光寺の本願御房これなり」と。ここに定禅たなごころをあわせ、ひざまずきて夢のうちにおもう様、さては生身の弥陀如来にこそと、身の毛いよだちて、恭敬尊重をいたす。また「御ぐしばかりをうつされんにたんぬべし」と云々 かくのごとく問答往復して、夢さめおわりぬ。しかるに、いまこの貴坊にまいりて、みたてまつる尊容、夢中の聖僧にすこしもたがわず」とて、随喜のあまり涙をながす。「しかれば夢にまかすべし」とて、いまも御ぐしばかりをうつしたてまつりけり。夢想は仁治三年九月廿日の夜なり。つらつらこの奇瑞をおもうに、聖人、弥陀如来の来現ということ炳焉なり。しかればす