巻次 - 850頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 ともまた不審なるとも、おおせられ候う人数、一人も御入り候わず。此の夏中と申さんもいまのことにて候う間、みなみな人目ばかり名聞の体たらく、言語道断あさましくおぼえ候う。これほどに毎日耳ぢかに聖教の中をえらびいだし申し候えども、つれなく御わたり候うこと、誠に、ことのたとえに、鹿の角をはちのさしたるように、みなみなおぼしめし候う間、千万千万勿体なく候う。一は無道心、一は無興隆ともおぼえ候う。此の聖教をよみ申し候わんも、今三十日の内のことにて候う。いつまでのようにつれなく御心中も御なおり候わでは、真実真実無道心に候う。誠に、たからの山にいりて手をむなしくしてかえらんにひとしかるべく候う。さればとて、当流の安心をとられ候わんにつけても、なにのわずらいか御わたり候わんや。今日よりして、ひしとみなみなおぼしめしたち候いて、信心を決定候いて、このたびの往生極楽をおぼしめしさだめられ候わば、誠に上人の御素意にも本意とおぼしめし候うべきものなり。この夏の初めよりすでに百日のあいだ、かたのごとく安心のおもむき申し候うといえども、誠に御心におもいいれられ候うすがたも、さのみみえたまい候わずおぼえ候う。すでに夏中と申すも、今日明日ばかりのことにて候う。こののちも、此の間の体たらくにて御入りあるべく候うや、あさましくおぼえ候う。よくよく、安心の次第、人にあいたずねられ候いて、決定せらるべく候う。はや明日までのことにて候う間、此のごとくかたく申し候うなり。よくよく御こころえあるべく候うなり。あなかしこ、あなかしこ。明応七年七月中旬 紙面画像を印刷 前のページ p850 次のページ 第二版p1019・1020へ このページの先頭に戻る