巻次 - 1019頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 御人数のかたがた、いかが御こころえ候うや、御こころもとなくおぼえ候う。いくたび申しても、ただおなじ体に御ききなし候いては、毎日において、随分、勘文をよみ申し候うその甲斐もあるべからず、ただ一すじめの信心のとおり御こころえの分も候わでは、更々、所詮無きことにて候う。されば、未安心の御すがた、ただ人目ばかりの御心中を御もち候うかたがたは、毎日の聖教には、中々、聴聞のこと無益かとおぼえ候う。その謂われはいかんと申し候うに、はや此の夏中もなかばはすぎて、二十四、五日の間のことにて候う。又上来も、毎日聖教の勘文をえらびよみ申し候えども、たれにても一人として、今日の聖教になにと申したることの、とうときとも、又不審なるとも、おおせられ候う人数、一人も御入り候わず候う。此の夏中と申さんも、いまのことにて候う間、みなみな人目ばかり、名聞の体たらく、言語道断、あさましくおぼえ候う。これほどに毎日耳ぢかに聖教の中をえらびいだし申し候えども、つれなく御わたり候うこと、誠に、ことのたとえに、鹿の角をはちのさしたるように、みなみなおぼしめし候う間、千万千万勿体無く候う。一は無道心、一は無興隆ともおぼえ候う。此の聖教をよみ申し候わんも、今三十日の内のことにて候う。いつまでのようにつれなく御心中も御なおり候わでは、真実真実、無道心に候う。誠に、たからの山にいりて手をむなしくしてかえらんにひとしかるべく候う。さればとて、当流の安心をとられ候わんにつけても、なにのわずらいか御わたり候わんや。今日よりして、ひしと、みなみなおぼしめしたち候いて、信心を決定候いて、このたびの往生極楽をおぼしめし 紙面画像を印刷 前のページ p1019 次のページ 初版p849・850へ このページの先頭に戻る