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く御辞退、再三におよぶ。しかれども、貴命のがれがたきによりて、使節として、上人 善信、安居院の房へむかわしめたまわんとす。ときに、縡もっとも重事なり、すべからく人をあいそえらるべきよし、もうさしめたまう。もっともしかるべしとて、西意善綽の御房をさしそえらる。両人、安居院の房にいたりて案内せらる。おりふし、沐浴と云々 「御つかい、たれびとぞや」と、とわる。「善信の御房入来あり」と云々 そのときおおきにおどろきて、この人の御使たること、邂逅なり、おぼろけのことにあらじとて、いそぎ温室よりいでて、対面。かみ、くだんの子細をつぶさに、聖人 源空 のおおせとて演説。法印もうされていわく、「このこと年来の御宿念たり。聖覚いかでか疎簡を存ぜん。たとい勅定たりというとも、師範の命をやぶるべからず。よりて、おおせをこうぶらざるさきに、聖道・浄土の二門を混乱せず、あまっさえ、浄土の宗義をもうしたてはんべりき。これしかしながら、王命よりも師孝をおもくするがゆえなり。御こころやすかるべきよし、もうさしめたまうべし」と云々 このあいだの一座の委曲、つぶさにするにいとまあらず。すなわち、上人 善信、御帰参ありて、公廷一座の唱導として、法印重説のむねを聖人 源空 の御前にて一言もおとしましまさず、分明に、又一座宣説しもうさる。そのときさしそえらるる善綽の御房に対して、「もし紕繆ありや」と、聖人 源空 おおせらるるところに、善綽の御房もうされていわく、「西意、二座の説法聴聞つこうまつりおわりぬ。言語のおよぶところにあらず」と云々 三百八十余人の御門侶のなかに、その上足といい、その器用といい、すでに清撰にあたりて、使節をつ