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土の縁を成ず」と。誠なるかな、斯の言、疑う者も必ず信を執り、謗ずる者も遂に情を翻す。実に是れ仏意相応の化導、抑も又勝利広大の知識なり。悪時悪世界の今、常没常流転の族、若し聖人の勧化を受けたてまつらずは、争か無上の大利を悟らん。既に一声称念の利剣を揮いて、忽ちに無明果業の苦因を截り、忝く三仏菩提の願船に乗じて、将に涅槃常楽の彼岸に到りなんとす。弥陀難思の本誓、釈迦慇懃の附属、仰がずんば有るべからず。諸仏誠実の証明、祖師矜哀の引入、憑まずんば有るべからず。茲れに因りて、各おの本願を持ち、名号を唱えて、弥いよ二尊の悲懐に恊い、仏恩を戴き、師徳を荷いて、特に一心の懇念を呈すべし。頌に曰わく、

「世尊説法時将了 慇懃附属弥陀名 五濁増時多疑謗 道俗相嫌不用聞」(法事讃)

念仏

「万行之中為急要 迅速無過浄土門 不但本師金口説 十方諸仏共伝証」(五会法事讃)

南無帰命頂礼尊重讃嘆祖師聖霊

 第三に、滅後利益の徳を述すというは、釈尊の、教網を三界に覆う、猶、末世苦海の群類を済い、今師の、法雨を四輩に灑ぐ、遠く常没濁乱の遺弟を湿す。彼の在世を謂えば即ち九十歳、顕宗・密教、讃仰せずということ莫し。其の行化を訪えば亦六十年、自利利他満足せずということ莫し。在家・出家の四部、群集すること、盛なる市に異ならず。大乗・小乗の三輩、帰伏すること、風に靡く草の如し。終に則ち花洛に還りて草庵を占めたまう。然る間、去んじ弘長第