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かんぞ報あらん。頻婆沙羅、現世の中において、また善果および悪果を得たり。このゆえに先王また不定なり。不定をもってのゆえに、殺もまた不定なり。殺不定ならば、云何してか定んで地獄に入ると言わんと。大王、衆生の狂惑におよそ四種あり。一つには貪狂、二つには薬狂、三つには呪狂、四つには本業縁狂なり。大王、我が弟子の中にこの四狂あり。多く悪を作るといえども、我ついにこの人戒を犯せりと記せず。この人の所作、三悪に至らず。もし還りて心を得ば、また犯と言わず。王、本国を貪してこれ父の王を逆害す。貪狂の心をもって与に作せり。いかんぞ罪を得ん。大王、人耽酔してその母を逆害せん、すでに醒悟し已りて心に悔恨を生ぜんがごとし。当に知るべし。この業また報を得じ。王今貪酔せり。本心の作せるにあらず。もし本心にあらずは、いかんぞ罪を得んや。大王、たとえば幻師の、四衢道の頭にして種種の男女・象馬・瓔珞・衣服を幻作するがごとし。愚痴の人は謂うて真実とす。有智の人は真にあらずと知れり。殺もまたかくのごとし。凡夫は実と謂えり、諸仏世尊はそれ真にあらずと知ろしめせり。大王、たとえば山谷の響の声のごとし。愚痴の人はこれを実の声と謂えり、有智の人はそれ真にあらずと知れり。殺もまたかくのごとし。凡夫は実と謂えり、諸仏世尊はそれ真にあらずと知ろしめせり。大王、人の怨あるが詐り来りて親附するがごとし。愚痴の人は謂うて実に親しむとす、智者は了達してすなわちそれ虚しく詐れりと知る。殺もまたかくのごとし。凡夫は実と謂う、諸仏世尊はそれ真にあらずと知ろしめせり。大王、人、鏡を執りて自ら面像を見るがごとし。愚痴の人は謂うて真の面とす、智者は了達してそれ真にあらずと知れり。殺もまたかくのごとし。凡夫は実と謂う、諸仏世尊はそれ真にあらずと知ろしめせり。大王、熱の時の炎のごとし。愚痴の人はこれはこれ水と謂わん、智者