巻次 信 299頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 害すべし」と。時に王、聞き已りて即ち悔心を生じて、死屍を供養しき。先王、是くの如く、尚軽く受くることを得て、地獄に堕ちず。況んや王、爾らずして、当に地獄の果報を受くべけんや。先王、自ら作りて還りて自ら之を受く。云何ぞ王をして殺罪を得しめん。王の言う所の如し。父の王、辜無くは、大王、云何ぞ失無きに罪有りと言わば則ち罪報有らん。悪業無くは則ち罪報無けん。汝が父先王、若し辜罪無くは、云何ぞ報有らん。頻婆沙羅、現世の中に於いて、亦善果及以び悪果を得たり。是の故に先王、亦復不定なり。不定を以ての故に、殺も亦不定なり。殺不定は、云何してか「定んで地獄に入る」と言わんと。 大王。衆生の狂惑に凡そ四種有り。一には貪狂、二には薬狂、三には呪狂、四には本業縁狂なり。大王。我が弟子の中に是の四狂有り。多く悪を作すと雖も、我終に、是の人、戒を犯せりと記せず。是の人の所作、三悪に至らず。若し還りて心を得ば、亦「犯」と言わず。王、本、国を貪して、此れ父の王を逆害す。貪狂の心をもって、与に作せり。云何ぞ罪を得ん。大王。人、耽酔として其の母を逆害せん。既に醒悟し已りて、心に悔恨を生ぜんが如し。当に知るべし。是の業、亦報を得じ。王、今貪酔せり。本心の作せるに非ず。若し本心に非ずは、云何ぞ罪を得んや。 大王。譬えば幻師の、四衢道の頭にして種種の男女・象馬・瓔珞・衣服を幻作するが如し。愚痴の人は謂うて真実とす。有智の人は真に非ずと知れり。殺も亦是くの如し。凡夫は実と謂えり。諸仏世尊は、其れ真に非ずと知ろしめせり。大王。譬えば山谷の響の声の如し。愚痴の人は、之を実の 紙面画像を印刷 前のページ p299 次のページ 初版p262・263へ このページの先頭に戻る