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しめざれと。何を以ての故に。吾、昔曾て聞きき、「得道の人、地獄に入らず」と。」」乃至
 「云何ぞ説きて、「定んで地獄に入る」と言わん。大王。一切衆生の所作の罪業に、凡そ二種有り。一には軽、二には重なり。若し心と口とに作るは則ち名づけて「軽」とす。身と口と心とに作るは則ち名づけて「重」とすと。大王。心に念い口に説きて、身に作さざれば、得る所の報、軽なり。大王、昔日、口に「殺せよ」と勅せず。但「足を削れ」と言えりき。大王、若し侍臣に勅せましかば、立ちどころに王の首を斬らまし。坐の時に乃ち斬るとも、猶罪を得じ。況んや王、勅せず。云何ぞ罪を得ん。王、若し罪を得ば、諸仏世尊も亦罪を得たまうべし。何を以ての故に。汝が父先王頻婆沙羅、常に諸仏に於いて諸の善根を種えたりき。是の故に今日、王位に居することを得たり。諸仏、若し其の供養を受けたまわざらまししかば、則ち王たらざらまし。若し王たらざらましかば、汝、則ち国の為に害を生ずることを得ざらましと。若し汝、父を殺して当に罪有るべくは、我等諸仏、亦罪有すべし。若し諸仏世尊、罪を得たまうこと無くは、汝独り云何ぞ罪を得んや。大王。頻婆沙羅、往、悪心有りて、毘富羅山にして遊行し、鹿を射猟して曠野に周遍しき。悉く得る所無し。唯、一の仙の五通具足せるを見る。見已りて即ち瞋恚悪心を生じき。「我今、遊猟す。所以に正しく坐を得ず。此の人、駆りて逐うに去らしむ。」即ち左右に勅して、之を殺せしむ。其の人、終に臨みて瞋りて悪心を生ず。神通を退失して誓言を作さく、「我、実に辜無し。汝、心口を以て横に戮害を加す。我、来世に於いて、亦当に是くの如く還りて、心口を以てして汝を