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 仏、阿難に告げたまわく、「たとえば世間に貧窮乞人の、帝王の辺にあらんがごとし。形貌容状、むしろ類すべけんや。」阿難、仏に白さく、「たといこの人、帝王の辺にあらんに、羸陋醜悪にして、もって喩えとすることなけん。百千万億不可計倍ならん。然る所以は、貧窮乞人は底極廝下にして、衣、形を蔽さず。食、趣に命を支う。飢寒困苦して、人理殆と尽きなんとす。みな、前世に徳本を植えず、財を積みて施さず、有るに富みて益す慳み、但、唐らに得んと欲うて貪求して厭うことなし、肯て善を修せず、悪を犯すこと山のごとく積もるに坐してなり。かくのごとくして寿終え、財宝消散して、身を苦しましめて聚積して、これがために憂悩すれども己において益なし。徒らに他の有と為る。善として怙むべきなし。徳として恃むべきなし。このゆえに死して悪趣に墮して、この長苦を受く。罪畢りて出ずることを得て、生まれて下賤と為りて愚鄙廝極にして、人類に示同す。世間に帝王の、人中に独尊なる所以は、みな宿世に徳を積めるによりて致すところなり。慈恵博く施し、仁愛兼ねて済う。信を履み善を修して、違

漢文

仏告阿難。譬如世間 貧窮乞人 在帝王辺。形貌容狀、寧可類乎。阿難白仏。仮令此人、在帝王辺、羸陋醜悪、無以為喩。百千万億 不可計倍。所以然者、貧窮乞人、底極廝下、衣不蔽形。食趣支命。飢寒困苦、人理殆尽。皆坐前世 不植徳本、積財不施、富有益慳、但欲唐得、貪求無厭、不肯修善、犯悪山積。如是寿終、財宝消散、苦身聚積、為之憂悩、於己無益。徒為他有。無善可怙。無徳可恃。是故死堕悪趣、受此長苦。罪畢得出、生為下賤、愚鄙廝極、示同人類。所以世間帝王 人中独尊、皆由宿世 積徳所致。慈恵博施、仁愛兼済。履信修善、無所違諍。是以寿終、福応得昇善道、上生天上、享茲福楽。