巻次 - 564頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 ときき、南無阿弥陀仏にあいまいらせんことこそ、ありがたく、めでたくそうろう御果報にてはそうろうなれ。おのおの、とかくはからわせたまうこと、ゆめゆめそうろうべからず。さきにくだしまいらせそうらいし、『唯信鈔』・『後世物語』・『自力他力』なんどの文どもにて、御覧そうろうべし。それこそ、この世にとりては、よきひとびとにてもおわします。また、すでに往生をもしておわしますひとびとにてそうらえば、その文どもにかかれてそうろうには、なにごともなにごとも、すぐべくもそうらわず。法然聖人の御おしえを、よくよく御こころえたるひとびとにておわしましそうらいき。さればこそ、往生もめでたくおわしましそうらえ。おおかたは、としごろ念仏もうしあわせたまうひとびとのなかにも、ひとえにわがおもうさまなることをのみ、もうしあわれてそうろうひとびともそうらいき。いまもさこそそうろうらめとおぼえそうろう。明法坊なんどの往生しておわしますも、もとは不可思議のひがごとをおもいなんどしたるこころをも、おもいかえしなんどしてこそそうらいしか。われ往生すべければとて、すまじきことをもし、おもうまじきことをもいいなんどすることはあるべくもそうらわず。貪欲の煩悩にくるわされて、欲もおこり、瞋恚の煩悩にくるわされて、ねたむべくもなき因果をもやぶるこころもおこり、愚痴の煩悩にまどわされて、おもうまじきことなんどもおこるにてこそそうらえ。めでたき仏の御ちかいのあればとて、わざとすまじきことどもをもし、おもうまじきことどもをもおもいなんどせば、よくよく、この世のいとわしからず、身のわるきことをもおもいもしらぬにてそうらえば、念仏にこころざしもなく、仏の御ちかいにもこころざしのおわしまさぬにてそうらえば、念仏せさせたまうことも、その御こころざしにては、順次の往生もかたくやそうろうべからん。 紙面画像を印刷 前のページ p564 次のページ 第二版p691・692へ このページの先頭に戻る