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すぞや」と問う。ひとこたえていわく、「あれこそ大勢至菩薩にてましませ。すなわち源空聖人の御ことなり」と云々 また問うていわく、「いま一鋪の尊形あらわれたまうを、あれはまたなに仏ぞや」と。人こたえていわく、「あれは大悲観世音菩薩にてましますなり。あれこそ善信御房にてわたらせたまえ」と、申すとおぼえて、夢さめおわりぬと云々 この事を聖人にかたり申さるるところに、「そのことなり。大勢至菩薩は智恵をつかさどりまします菩薩なり。すなわち智恵は光明とあらわるるによりて、ひかりばかりにて、その形体はましまさざるなり。先師源空聖人、勢至菩薩の化身にましますということ、世もって人のくちにあり」とおおせごとありき。鸞聖人の御本地の様は、御ぬしに申さん事、わが身としては、はばかりあれば申しいだすにおよばず。かの夢想ののちは、心中に渇仰のおもいふかくして、年月をおくるばかりなり。すでに御帰京ありて、御入滅のよし、うけ給わるについて、わがちちは、かかる権者にてましましけると、しりたてまつられんがために、しるし申すなりとて、越後の国府よりとどめおき申さるる恵信御房の御文、弘長三年春の比、御むすめ覚信御房へ進ぜらる。わたくしにいわく、源空聖人、勢至菩薩の化現として、本師弥陀の教文を和国に弘興しまします。親鸞上人、観世音菩薩の垂迹として、ともにおなじく無碍光如来の智炬を本朝にかがやかさんために師弟となりて、口決相承しましますこと、あきらかなり。あおぐべし、とうとむべし。
13一 蓮位房 聖人常随の御門弟、真宗稽古の学者、俗姓源三位頼政卿順孫 夢想の記。
 建長八歳 丙辰 二月九日の夜寅時、釈蓮位、夢に聖徳太子の勅命をこうぶる。皇太子の尊容を示現して、釈親鸞法師にむかわしめましまして、文を誦して、親鸞聖人を敬礼しまします。その告命の文にのたまわく、