巻次 - 671頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 いつべけれ。おろかにつたなげにして、なげきかなしまんこと、他力往生の機に相応たるべし。うちまかせての凡夫のありさまにかわりめあるべからず。往生の一大事をば、如来にまかせたてまつり、今生の身のふるまい、心のむけよう、口にいうこと、貪・瞋・痴の三毒を根として、殺生等の十悪、穢身のあらんほどは、たちがたく、伏しがたきによりて、これをはなるること、あるべからざれば、なかなかおろかにつたなげなる煩悩成就の凡夫にて、ただありに、かざるところなきすがたにてはんべらんこそ、浄土真宗の本願の正機たるべけれと、まさしくおおせありき。されば、つねのひとは、妻子眷属の愛執ふかきをば、臨終のきわにはちかずけじ、みせじと、ひきさくるならいなり。それというは、着想にひかれて、悪道に堕せしめざらんがためなり。この条、自力聖道のつねのこころなり。他力真宗には、この義あるべからず。そのゆえは、いかに境界を絶離すというとも、たもつところの他力の仏法なくは、なにをもってか、生死を出離せん。たとい妄愛の迷心深重なりというとも、もとよりかかる機をむねと摂持せんといでたちて、これがためにもうけられたる本願なるによりて、至極大罪の五逆謗法等の無間の業因を、おもしとしましまさざれば、まして愛別離苦にたえざる悲嘆にさえらるべからず。浄土往生の信心成就したらんにつけても、このたびが輪回生死のはてなれば、なげきもかなしみも、もっともふかかるべきについて、あとまくらにならびいて、悲歎嗚咽し、ひだりみぎに群集して、恋慕涕泣すとも、さらにそれによるべからず。さなからんこそ、凡夫げもなくて、殆他力往生の機には不相応なるかやともきらわれつべけれ。されば、みたからん境界をも、はばかるべからず、なげきかなしまんをも、いさむべからずと云々 紙面画像を印刷 前のページ p671 次のページ 第二版p817・818へ このページの先頭に戻る