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『正信偈』・『和讃』は、衆生の、弥陀如来を一念にたのみまいらせて、後生たすかりもうせ、とのことわりを、あそばされたり。よくききわけて、信心をとりて、ありがたやありがたやと、聖人の御前にて、よろこぶことなり」と、くれぐれ、仰せそうろうなり。
32一 「南無阿弥陀仏の六字を、他宗には、大善・大功徳にてあるあいだ、となえて、この功徳を諸仏・菩薩・諸天にまいらせて、その功徳をわがものがおにするなり。一流には、さなし。この六字の名号、わがものにてありてこそ、となえて仏・菩薩にまいらすべけれ。一念一心に、後生たすけたまえとたのめば、やがて御たすけにあずかることの、ありがたやありがたやと、もうすばかりなり」と、仰せ候うなり。
33一 三河の国より、浅井の後室、御いとまごいにとて、まいり候うに、富田殿へ御下向のあしたのことなれば、ことのほかに御とりみだしにて御座候うに、仰せに、「名号をただとなえて仏にまいらするこころにては、ゆめゆめ、なし。弥陀仏を、しかと御たすけそうらえと、たのみまいらすれば、やがて仏の御たすけにあずかるを、南無阿弥陀仏ともうすなり。しかれば、御たすけにあずかりたることを、ありがたさよありがたさよと、こころにおもいまいらするを、くちにおおく、南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏ともうすを、仏恩を報ずると、もうすことなり」と、仰せ候いき。
34一 順誓、もうしあげられ候う。「「一念発起のところにて、つみ、みな消滅して、正定聚不退のくらいにさだまる」と、『御文』にあそばされたり。しかるに、「つみは、いのちのあるあいだ、つみもあるべし」と、おおせそうろう。『御文』と別にきこえもうしそうろうや」と、もうしあげそうろうとき、仰せに、「「一念の