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85一 前々住上人、仰せられ候う。「前々より御相続の義は、別義なきなり。ただ弥陀たのむ一念の義よりほか、別義なく候う。これよりほか、御存知なく候う。いかようの御誓言もあるべき」由、仰せられ候う。
86一 同じく仰せられ候う。「凡夫往生、ただたのむ一念にて仏にならぬことあらば、いかなる御誓言をも仰せらるべき。証拠は、南無阿弥陀仏なり。十方の諸仏の証人候う。」
87一 蓮如上人、仰せられ候う。「物をいえいえ」と、仰せられ候う。「物をいわぬ者は、おそろしき」と、仰せられ候う。「信不信、ともに、ただ、物をいえ」と、仰せられ候う。「物を申せば、心底もきこえ、また、人にもなおさるるなり。ただ、物を申せ」と、仰せられ候う由候う。
88一 蓮如上人、仰せられ候う。「仏法は、つとめのふしはかせもしらで、よくすると思うなり。つとめのふし、わろき」よしを、仰せられ、慶聞坊をいつもとりつめ、仰せられつる由に候う。それに付きて、蓮如上人、仰せられ候う。「一向にわろき人は、ちがいなどという事もなし。ただわろきまでなり。わろしとも仰せごとなきなり。法義をも心にかけ、ちとこころえもある上のちがいが、ことのほかの違いなり」と、仰せられ候う由に候う。
89一 人の、こころえのとおり、申されけるに、「わがこころは、ただ、かごに水を入れ候うように、仏法の御座敷にては、ありがたくもとうとくも存じ候うが、やがて、もとの心中になされ候う」と、申され候う所に、前々住上人、仰せられ候う。「そのかごを水につけよ」と。わが身をば法にひてておくべきよし、仰せられ候う。万事、信なきによりてわろきなり。善知識の、わろきと、仰せらるるは、信のなきことをくせごとと、仰