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せば、身をきりさくようにかなしきよ」と、仰せられ候う由に候う。
113一 同じく仰せに、「われは、人の機をかがみ、人にしたがいて、仏法を御聞かせ候う」由、仰せられ候う。いかにも、人のすきたることなど申させられ、「うれしや」と存じ候う処に、また、仏法の事を仰せられ候う。いろいろ、御方便にて、人に法を御きかせ候いつる由に候う。
114一 前々住上人、仰せられ候う。「人の、仏法を信じて、われによろこばせんと、思えり。それはわろし。信をとれば、自心の勝徳なり。さりながら、信をとらば、恩にも御うけあるべき」と、仰せられ候う。また、「ききたくもなき事なりとも、まことに信をとるべきならば、きこしめすべき」由、仰せられ候う。
115一 同じく仰せに、「まことに、一人なりとも信をとるべきならば、身を捨てよ。それは、すたらぬ」と、仰せられ候う。
116一 あるとき、仰せられ候う。「御門徒の心得をなおすときこしめして、老の皺をのべ候う」と、仰せられ候う。
117一 ある御門徒衆に御尋ね候う。「そなたの坊主、心得のなおりたるを、うれしく存ずるか」と、御尋ね候えば、申され候う。「寔に、心得をなおされ、法儀を心にかけられ候う。一段、ありがたく、うれしく存じ候う」由、申され候う。そのとき、仰せられ候う。「われは、なお、うれしく思うよ」と、仰せられ候う。
118一 おかしき事能をもさせられ、仏法に退屈仕り候う者の心をもくつろげ、その気をもうしなわれて、また、あたらしく、法を仰せられ候う。誠に、善巧方便、ありがたき事なり。