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御往生ありて、一年存命候う処に、法敬に、ある人、仰せられ候う。「前々住上人、仰せられ候うは、あい申したるよ。その故は、一年も存命候うは、命を、前々住上人より御あたえ候う事にて候う」と、仰せ候えば、「誠に、さにて御入り候う」とて、手をあわせ、ありがたき由を申され候う。それより後、前々住上人、仰せられ候うごとく、十年存命候う。誠に、冥加に叶われ候う。不思議なる人にて候う。
267一 「毎年、無用なることを仕り候う義、冥加なき」由、条々、いつも仰せられ候う由に候う。
268一 蓮如上人、「物をきこしめし候うにも、如来・聖人の御恩を御忘れなし」と、仰せられ候う。「一口きこしめしても、思し召し出だされ候う」由、仰せられ候うと云々
269一 御膳を御覧じても、「人のくわぬ飯をくうべきことよと、思し召し候う」由、仰せられ候う。「物をすぐにきこしめすことなし。ただ、御恩のとうときことをのみ、思し召し候う」と、仰せ候うと云々
270一 享禄二年、十二月十八日の夜、兼縁、夢に、蓮如上人、『御文』をあそばし下され候う。その御詞に、梅干のたとえ候う。「梅干のことをいえば、みな人の口、一同にすし。一味の安心は、かように、かわるまじきなり。」「同一念仏 無別道故」(論註)の心にて候いつるようにおぼえ候うと云々
271一 「仏法をすかざるがゆえに、嗜み候わず」と、空善、申され候えば、蓮如上人、仰せられ候う。「それは、このまぬは、きらうにてはなきか」と、仰せられ候うと云々
272一 「不法の人は、仏法を違例にする」と、仰せられ候う。「仏法の御讃嘆あれば、あらきづまりや、とくはてよかしと思うは、違例にするにてはなきか」と、仰せられ候うと云々