巻次
-
963頁
表示設定
ブックマーク
表示設定
文字サイズ
書体
  • ゴシック
  • 明朝
カラー
テキスト情報
本文
画像情報
画像情報
本文

十七条憲法

夏四月の丙寅の朔戊辰のひに、皇太子、親ら肇めて憲法十七条作りたまう。

 一つに曰わく、和らかなるをもって貴しとし、忤うること無きを宗とせよ。人皆党有り。また達る者少なし。是をもって、あるいは君父に順わず。また隣里に違う。しかれども、上和らぎ下睦びて、事を論うに諧うときは、事理自ずからに通う。何事か成らざらん。
 二つに曰わく、篤く三宝を敬え。三宝とは仏・法・僧なり。すなわち四生の終わりの帰、万の国の極めの宗なり。何の世、何の人か、この法を貴びずあらん。人、はなはだ悪しきもの鮮なし。よく教うるときは従う。其れ三宝に帰りまつらずは、何をもってか枉れるを直さん。
 三つに曰わく、詔を承りては必ず謹め。君をば天とす。臣をば地とす。天は覆い地は載す。四時順い行いて、万の気通うことを得。地、天を覆わんとするときは、壊るることを致さん。是をもって、君言うことをば臣承る。上行うときは下靡く。かれ、詔を承りては必ず慎め。謹まずは自ずからに敗れなん。
 四つに曰わく、群卿百寮、礼びをもって本とせよ。其れ民を治むるが本、要ず礼びに在り。上礼びなきときは、下斉らず。下礼び無きときは、必ず罪有り。是をもって、群臣礼び有るときは、位の次乱れず。百姓礼び有るときは、国家自ずからに治まる。