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おもいよらず、一人たりというとも殺害しつべき心ちせず」と云々 上人かさねてのたまわく、「なんじ、わがおしえを日比そむかざるうえは、いまおしうるところにおいて、さだめてうたがいをなさざるか。しかるに一人なりとも殺害しつべきここちせずというは、過去に、そのたねなきによりてなり。もし過去にそのたねあらば、たとい、殺生罪をおかすべからず、おかさば、すなわち往生をとぐべからずと、いましむというとも、たねにもよおされて、かならず殺罪をつくるべきなり。善悪のふたつ、宿因のはからいとして、現果を感ずるところなり。しかれば、まったく往生においては、善もたすけとならず、悪もさわりとならずということ、これをもって准知すべし。」
(5)一 自力の修善はたくわえがたく、他力の仏智は、護念の益をもってたくわえらるる事。
 たとい万行諸善の法財を修し、たくわうというとも、進道の資糧となるべからず。ゆえは、六賊知聞して侵奪するがゆえに。念仏においては、すでに行者の善にあらず、行者の行にあらずとら、釈せらるれば、凡夫自力の善にあらず。まったう弥陀の仏智なるがゆえに、諸仏護念の益によりて、六賊これをおかすにあたわざるがゆえに、出離の資糧となり、報土の正因となるなり。しるべし。
(6)一 弟子同行をあらそい、本尊・聖教をうばいとること、しかるべからざるよしの事。
 常陸国新堤の信楽坊、聖人 親鸞 の御前にて、法文の義理ゆえに、おおせをもちいもうさざるによりて、突鼻にあずかりて、本国に下向のきざみ、御弟子蓮位房もうされていわく、「信楽