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上末
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おおせられいだすべし」と。
 しかるに翌日集会のところに、聖人 親鸞 のたまわく、「今日は信不退・行不退の御座を、両方にわかたるべきなり。いずれの座につきたまうべしとも、おのおの示し給え」と。そのとき三百余人の門侶、みな其の意を得ざる気あり。時に法印大和尚位聖覚、幷びに釈の信空 法蓮上人 「信不退の御座に着くべし」と云々 つぎに沙弥法力 熊谷直実入道 遅参して申して云わく、「善信の御房の御執筆何事ぞや」と。善信聖人のたまわく、「信不退・行不退の座をわけらるるなり」と。法力坊申して云わく、「然らば法力、もるべからず。信不退の座にまいるべし」と云々 仍って、これをかきのせたまう。ここに数百人の門徒群居すといえども、さらに一言をのぶる人なし、是れ恐らくは、自力の迷心に拘りて、金剛の真信に昏きがいたすところか。人みな無音のあいだ、執筆聖人(親鸞)、自名をのせたまう。ややしばらくありて、大師聖人(法然)仰せられて云わく、「源空も信不退の座につらなり侍るべし」と。この時、門葉、或いは屈敬の気をあらわし、或いは鬱悔の色をふくめり。

(絵)

 聖人 親鸞 のたまわく、「いにしえ我が本師聖人の御前に、聖信房、勢観房、念仏房已下の人々おおかりし時、はかりなき諍論をし侍る事ありき。そのゆえは、「聖人 源空 の御信心と、善信が信心と、いささかもかわるところあるべからず。ただ一なり」と申したりしに、このひとびと、