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て、同科の故に、忽ちに上都の幽棲を出でて、遙かに北陸の遠境に配す。然る間、居諸頻りに転じ、涼燠屢しば悛まる。爾の時、憍慢貢高の儔、邪見を翻して、以ちて正見に赴き、儜弱下劣の彙、怯退を悔いて、以て弘誓に託す。貴賤の帰投遐邇合掌、都鄙の化導首尾満足す。遂に則ち蓬闕勅免の恩、新たに加わりし時、華洛帰歟の運、再び開けし後、九十有回生涯の終を迎えて、十万億西涅槃の果を証したまいしより以来、星霜積もりて幾許の歳ぞ。年忌月忌、本所報恩の勤、懈ること無く、山川隔たりて数百里、遠国近国、後弟参詣の儀、猶煽なり。是れ併しながら聖人の弘通、冥意に叶うが致す所なり。寧ろ衆生の開悟、根熟の然らしむるに依るに非ずや。
 凡そ三段の式文、称揚足りぬと雖も、二世の益物讃嘆、未だ倦まず。是の故に一千言の褒誉を加えて、重ねて百万端の報謝に擬す。然れば則ち蓮華蔵界の中にして、今の講肆を照見し、檀林宝座の上より、斯の梵莚に影向したまうらん。内証外用、定めて果地の荘厳を添え、上求下化、宜しく菩提の智断を究めたまうべし。重ねて乞う、仏閣基固くして、遙かに梅怛梨耶の三会に及び、法水流れ遠くして、普く六趣・四生の群萌を潤さん。敬いて白す。

寛正二年十二月八日奉書写訖  右筆蓮如 四十七才