巻次
第五帖
1009頁
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のかた、つくりおきたる悪業煩悩をば、一時に消滅したまうゆえに、われらが煩悩悪業はことごとくみなきえて、すでに正定聚不退転なんどいうくらいに住すとはいうなり。このゆえに南無阿弥陀仏の六字のすがたは、われらが極楽に往生すべきすがたをあらわせるなりと、いよいよしられたるものなり。されば、安心というも信心というも、この名号の六字のこころをよくよくこころうるものを、他力の大信心をえたるひととはなづけたり。かかる殊勝の道理あるがゆえに、ふかく信じたてまつるべきものなり。あなかしこ、あなかしこ。
(一四) それ、一切の女人の身は、ひとしれずつみのふかきこと、上臈にも下主にもよらぬ、あさましき身なりとおもうべし。それにつきては、なにとように弥陀を信ずべきぞというに、なにのわずらいもなく、阿弥陀如来をひしとたのみまいらせて、今度の一大事の後生たすけたまえともうさん女人をば、あやまたずたすけたまうべし。さてわが身のつみのふかきことをばうちすてて、弥陀にまかせまいらせて、ただ一心に、弥陀如来、後生たすけたまえとたのみもうさば、その身をよくしろしめしてたすけたまうべきこと、うたがいあるべからず。たとえば十人ありとも百人ありとも、みなことごとく極楽に往生すべきこと、さらにそのうたがうこころ、つゆほどももつべからず。かように信ぜん女人は、浄土にうまるべし。かくのごとくやすきことを、いままで信じたてまつらざることのあさましさよとおもいて、なおなお、ふかく弥陀如来をたのみたてまつるべきものなり。あなかしこ、あなかしこ。