巻次
-
1033頁
表示設定
ブックマーク
表示設定
文字サイズ
書体
  • ゴシック
  • 明朝
カラー
テキスト情報
本文
画像情報
画像情報
本文

(32)一 「南無阿弥陀仏の六字を、他宗には、大善・大功徳にてあるあいだ、となえて、この功徳を諸仏・菩薩・諸天にまいらせて、その功徳をわがものがおにするなり。一流には、さなし。この六字の名号、わがものにてありてこそ、となえて仏・菩薩にまいらすべけれ。一念一心に、後生たすけたまえとたのめば、やがて御たすけにあずかることの、ありがたやありがたやと、もうすばかりなり」と仰せ候うなり。
(33)一 三河の国より、浅井の後室、御いとまごいにとて、まいり候うに、富田殿へ御下向のあしたのことなれば、ことのほかに御とりみだしにて御座候うに、仰せに、「名号をただとなえて仏にまいらするこころにては、ゆめゆめなし。弥陀仏を、しかと御たすけそうらえと、たのみまいらすれば、やがて仏の御たすけにあずかるを、南無阿弥陀仏ともうすなり。しかれば、御たすけにあずかりたることを、ありがたさよありがたさよと、こころにおもいまいらするを、くちにおおく南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏ともうすを、仏恩を報ずるともうすことなり」と仰せ候いき。
(34)一 順誓もうしあげられ候う。「「一念発起のところにて、つみ、みな消滅して、正定聚不退のくらいにさだまる」と『御文』にあそばされたり。しかるに、「つみは、いのちのあるあいだ、つみもあるべし」とおおせそうろう。『御文』と別にきこえもうしそうろうや」ともうしあげそうろうとき、仰せに、「「一念のところにて、つみ、みなきえて」とあるは、一念の信力にて往生さだまるときは、つみは、さわりともならず。されば、なき分なり。いのちの、娑婆にあらんかぎりは、つみ