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(221)一 前々住上人、仰せられ候う。「不審と、一向しらぬとは、各別なり。知らぬことをも不審と申す事、いわれなく候う。物を分別して、あれはなにと、これはいかがなど云うようなることが、不審にて候う。子細もしらずして申す事を、不審と申しまぎらかし候う」由、仰せられ候う。
(222)一 前々住上人、仰せられ候いき。「御本寺・御坊をば、聖人御存生の時のように思し召され候う。自身は、御留主を、当座、御沙汰候う。然れども、仏恩を御忘れ候う事はなく候う」と、御斎の御法談に仰せられ候いき。「御斎を御受用候う間にも、少しも御わすれ候うこと、御入りなき」と仰せられ候いき。
(223)一 善如上人・綽如上人、両御代の事、前住上人(実如)、仰せられ候うこと。「両御代は、威儀を本に御沙汰候いし」由、仰せられし。「然れば、今に御影に御入り候う」由、仰せられ候う。「黄袈裟・黄衣にて候う。然れば、前々住上人の御時、あまた御流にそむき候う本尊以下、御風呂のたびごとに、やかせられ候う。此の二幅の御影をも、やかせらるべきにて御取り出だし候いつるが、いかがと思し召し候いつるやらん、表紙に、かきつけを、「よし、わろし」とあそばされて、とりておかせられ候う。此の事を、今、御思案候えば、「御代のうちさえ、かように御ちがい候う。ましてやいわん、われら式の者は、違いばかりたるべき間、一大事と存じ、つつしめ」との御事に候う。今、思いあわせられ候う」由、候うなり。又、「「よし、わろし」と、あそばされ候うこと、「わろしとばかりあそばし候えば、先代の御事にて候えば」と思し召し、かように