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礼不きときは、下、斉らず。下、礼無きときは、以て必ず罪有り。是を以て、群臣、礼有るときは、位の次乱れず。百姓、礼有るときは、国家、自ずからに治まる。
 五に曰わく、餮を絶ち、欲を棄て、明らかに訴訟を弁めよ。其れ百姓の訟、一日に千事あり。一日すらも尚爾り。況んや歳を累ねてをや。頃、訟を治むる者、利を得て常とし、賄を見ては讞すを聴く。便ち財有るものが訟は、石をもって水に投ぐるが如し。乏しき者の訴は、水をもって石に投ぐるに似たり。是を以て、貧しき民は則ち由る所を知らず。臣の道、亦、於焉に闕けぬ。
 六に曰わく、悪を懲らし善を勧むるは、古の良き典なり。是を以て、人の善を匿すこと無かれ、悪を見ては必ず匡せ。其れ諂い詐く者は、則ち国家を覆す利き器たり、人民を絶つ鋒き剣たり。亦、侫み媚ぶる者、上に対かいては則ち好みて下の過を説き、下に逢うては則ち上の失を誹謗る。其れ如此の人、皆、君に忠無く、民に仁無し。是れ大きなる乱の本なり。
 七に曰わく、人各おの任有り。掌ること、宜しく濫れざるべし。其れ、賢哲、官に任すときは、頌むる音則ち起こる。姧き者、官を有つときは、禍・乱則ち繁し。世に生まれながら知ること少なし。剋く念いて聖と作る。事、大いなり・少き無く、人を得て必ず治まらん。時、急き・緩きこと無く、賢に遇うて自ずからに寛かなり。此れに因りて、国家、永久にして、社稷危からず。故、古の聖の王、官の為に、以て人を求めて、人の為に官を求めたまわず。