巻次 - 688頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 あしざまに御こころえたること、おおくそうらいき。いまもさこそそうろうらめとおぼえそうろうなり。浄土のおしえもしらぬ、信見房なんどがもうすことによりて、ひがざまに、いよいよなりあわせたまいそうろうらんと、ききそうろうこそ、あさましくそうらえ。 まず、おのおの御こころえは、むかしは弥陀のちかいをもしらず、阿弥陀仏をももうさずおわしましそうらいしが、釈迦・弥陀の御方便にもよおされて、いま弥陀のちかいをもききはじめておわします身にてそうろうなり。もとは、無明のさけによいふして、貪欲・瞋恚・愚痴の三毒をのみ、このみめしおうてそうらいつるに、仏の御ちかいをききはじめしより、無明のよいも、ようようすこしずつさめ、三毒をもすこしずつこのまずして、阿弥陀仏のくすりをつねにこのみめす身となりておわしましおうてそうろうぞかし。しかるに、なお無明のよいもさめやらぬに、かさねてよいをすすめ、毒もきえやらぬに、なお三毒をすすめられそうろうらんこそ、あさましくおぼえそうらえ。煩悩具足の身なれば、こころにもまかせ、身にもすまじきことをもゆるし、口にもいうまじきことをもゆるし、こころにもおもうまじきことをもゆるして、いかにもこころのままにあるべしともうしおうてそうろうらんこそ、かえすがえす不便におぼえそうらえ。よいもさめぬさきに、なおさけをすすめ、毒もきえやらぬものに、いよいよ毒をすすめんがごとし。くすりあり毒をこのめ、とそうろうらんことは、あるべくもそうらわずとぞ、おぼえそうろう。 仏のちかいをもきき、念仏ももうして、ひさしゅうなりておわしまさんひとびとは、この世の 紙面画像を印刷 前のページ p688 次のページ 初版p560・561へ このページの先頭に戻る