巻次 - 692頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 おおかたは、としごろ念仏もうしあわせたまうひとびとのなかにも、ひとえにわがおもうさまなることをのみ、もうしあわれてそうろうひとびともそうらいき。いまもさこそそうろうらめとおぼえそうろう。明法坊なんどの往生しておわしますも、もとは不可思議のひがごとをおもいなんどしたるこころをも、おもいかえしなんどしてこそそうらいしか。われ往生すべければとて、すまじきことをもし、おもうまじきことをもいいなんどすることは、あるべくもそうらわず。貪欲の煩悩にくるわされて、欲もおこり、瞋恚の煩悩にくるわされて、ねたむべくもなき因果をもやぶるこころもおこり、愚痴の煩悩にまどわされて、おもうまじきことなんどもおこるにてこそそうらえ。めでたき仏の御ちかいのあればとて、わざとすまじきことどもをもし、おもうまじきことどもをも、おもいなんどせば、よくよく、この世のいとわしからず、身のわるきことをも、おもいもしらぬにてそうらえば、念仏にこころざしもなく、仏の御ちかいにも、こころざしのおわしまさぬにてそうらえば、念仏せさせたまうことも、その御こころざしにては、順次の往生もかたくやそうろうべからん。よくよくこのよしをひとびとに、きかせまいらせたまうべくそうろう。かようにも、もうすべくもそうらわねども、なにとなく、この辺のことを、御こころにかけあわせたまうひとびとにておわしましいてそうらえば、かくほども、もうしそうろうなり。 この世の念仏の義は、ようようにかわりおうてそうろうめれば、とかくもうすにおよばずそうらえども、故聖人(法然)の御おしえを、よくよくうけたまわりておわしますひとびとは、いまももと 紙面画像を印刷 前のページ p692 次のページ 初版p564・565へ このページの先頭に戻る