巻次 - 698頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 七月九日 親鸞性信の御坊(八) 護念坊のたよりに、教念御坊より、銭二百文、御こころざしのもの、たまわりてそうろう。さきに、念仏のすすめのもの、かたがたの御なかよりとて、たしかにたまわりてそうらいき。ひとびとに、よろこびもうさせたまうべくそうろう。この御返事にて、おなじ御こころにもうさせたまうべくそうろう。 さては、この御たずねそうろうことは、まことによき御うたがいどもにてそうろうべし。まず、「一念にて往生の業因はたれり」ともうしそうろうは、まことにさるべきことにてそうろうべし。さればとて、一念のほかに念仏をもうすまじきことにはそうらわず。そのようは、『唯信鈔』にくわしくそうろう。よくよく、御覧そうろうべし。「一念のほかに、あまるところの念仏は、十方の衆生に回向すべし」とそうろうも、さるべきことにてそうろうべし。十方の衆生に回向すればとて、二念・三念せんは往生にあしきことと、おぼしめされそうらわば、ひがごとにてそうろうべし。念仏往生の本願とこそ、おおせられてそうらえば、おおくもうさんも一念・一称も往生すべしとこそ、うけたまわりてそうらえ。かならず一念ばかりにて往生すといいて、多念をせんは往生すまじきともうすことは、ゆめゆめあるまじきことなり。『唯信鈔』を、よくよく御覧そうろうべし。 また、有念無念ともうすことは、他力の法文には、あらぬことにてそうろう。聖道門にもうすこ 紙面画像を印刷 前のページ p698 次のページ 初版p569・570へ このページの先頭に戻る