巻次 - 760頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 り候うが、昨年今年は死に歳と申し候えば、よろず常に申しうけたまわりたく候えども、確かなる便も候わず。さて、生きて候う時と思い候いて、五重に候う塔の、七尺に候う石の塔をあつらえて候えば、このほどは仕出だすべきよし申し候えば、今は所ども離れ候いて、下人ども皆逃げ失せ候いぬ。よろずたよりなく候えども、生きて候う時、建ててもみばやと思い候いて、このほど仕出だして候うなれば、これへ持つほどになりて候うと聞き候えば、いかにしても生きて候う時、建ててみばやと思い候えども、いかようにか候わんずらん。そのうちにもいかにもなり候わば子どもも建て候えかしと思いて候う。何事も、生きて候いし時は、常に申しうけたまわりたくこそおぼえ候えども、はるばると雲の外なるようにて候う事、まめやかに親子の契もなきようにてこそおぼえ候え。殊には乙子にておわしまし候えば、いとおしきことに思いまいらせて候いしかども、見まいらするまでこそ候わざらめ。常に申しうけたまわる事だにも候わぬ事、よに心ぐるしくおぼえ候う。五月十三日 これは確かなる便にて候う。時に、こまかにこまかに申したく候えども、ただ今とて、この便いそぎ候えば、こまかならず候う。又、このえもんにゅうどう殿の御言葉かけられまいらせて候うとて、喜び申し候う也。この便は確かに候えば、何事もこまかに仰せられ候うべし。あなかしこ、あなかしこ。 ぜんあく、それへの殿人どもは、もと候いしけさと申すも、娘失せ候いぬ。いま、それの娘 紙面画像を印刷 前のページ p760 次のページ 初版p621・622へ このページの先頭に戻る