巻次
-
761頁
表示設定
ブックマーク
表示設定
文字サイズ
書体
  • ゴシック
  • 明朝
カラー
テキスト情報
本文
画像情報
画像情報
本文

一人候う。母めも、所労ものにて候う。さて、おとほうしと申し候いしは、男になりて、とう四郎と申すと、又、女の童のふたばと申す女の童、今年は十六になり候う女の童は、それへ参らせよと申して候う也。何事も、御文に尽くし難く候いて止め候いぬ。又、もとよりのことり、七子養わせて候うも候う。

五月十三日    (花押)

(九) (わかさ殿申させ給え    ちくぜん  とびたのまきより)
 便を喜びて申し候う。さては、昨年の八月のころより、とけ腹の煩わしく候いしが、ことにふれて、よくもなり得ず候うばかりぞ、煩わしく候えども、そのほかは、歳の故にて候えば、今は耄れて、正体なくこそ候え。今年は、八十六になり候うぞかし。寅の年のものにて候えば。
 又、それへ参らせて候いし奴ばらも、とかくなり候いて、ことりと申し候う年来のやつにて、三郎たと申し候いしが相具して候うが、入道になり候いて、さいしんと申し候う。入道めにはちあるものの中の、うまのじょうとかや申して御家人にて候うものの娘の、今年は十やらんになり候うを、母はよに穏しく愛く候いし、かがと申して使い候いしが、一年の温病の年、死にて候う。親も候わねば、ことりも子なきものにて候う。時にあずけて候う也。それ、又、けさと申し候いし娘の、なでしと申し候いしが、よによく候いしも、温病に失せ候いぬ。その母の候うも、年来、頭に腫物の年来候いしが、それもたふし大□にて、頼みなきと申し候う。その娘一人候うは、今年は二十に