巻次 - 764頁 表示設定 ブックマーク 表示設定 文字サイズ あ あ あ 書体 ゴシック 明朝 カラー あ あ あ テキスト情報 本文 画像情報 画像情報 本文 又、光寿御前の修行に下るべきとかや仰せられて候いしかども、これへは見えられず候う也。又、わかさ殿の今はおとなしく年寄りておわし候うらんと、よにゆかしくこそおぼえ候え。かまえて、念仏申して、極楽へ参り合わせ給えと候うべし。何よりも何よりも、公達の御事こまかに仰せ候え。うけたまわりたく候う也。一昨年やらん生まれておわしまし候いけるとうけ給わり候いしは、それもゆかしく思いまいらせ候う。 又、それへ参らせ候わんと申し候いし女の童も、一年の大温病に多く失せ候いぬ。ことりと申し候う女の童も、はや年寄りて候う。父は御けん人にて、うまのじょうと申すものの娘の候うも、それへ参らせんとて、ことりと申すにあずけて候えば、よに無道げに候いて、髪などもよにあさましげにて候う也。ただの童にて、いまいましげにて候うめり。けさが娘のわかばと申す女の童の、今年は二十一になり候うが、妊みて、この三月やらんに、子生むべく候えども、男子ならば、父ぞ取り候わんずらん。先にも五になる男子生みて候いしかども、父相伝にて、父が取りて候う。これもいかが候わんずらん。わかばが母は、頭に何やらん、ゆゆしげなる腫物のいでき候いて、はや十余年になり候うなるが、いたずらものにて、時日を待つように候うと申し候う。それに上りて候いしおり、おとほうしとて童にて候いしが、それへ参らすべきと申し候えども、妻子の候えば、よも、参らんとは申し候わじと、おぼえ候う。尼(恵信尼)が臨終し候いなん後には、栗沢に申しおき候わんずれば、参れと仰せ候うべし。 紙面画像を印刷 前のページ p764 次のページ 初版p624・625へ このページの先頭に戻る