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再三辞退もうすといえども、御とものものに、「修行者かくるところのかご負をかくべし」と御下知ありて御車にひきのせらる。しこうして、かの御坊に御参ありて空聖人の御前にて、鸞上人、「鎮西のものと申して、修行者一人、求法のためとて御房をたずね申して侍りつるを、路次よりあいともないてまいりてそうろう。めさるべきをや」と云々 空聖人、「こなたへ招請あるべし」とおおせあり。よりて鸞上人、かの修行者を御引導ありて、御前へめさる。そのとき空聖人、かの修行者をにらみましますに、修行者また聖人をにらみかえしたてまつる。かくてややひさしくたがいに言説なし。しばらくありて空聖人おおせられてのたまわく、「御坊はいずこのひとぞ。またなにの用ありてきたれるぞや」と。修行者申していわく、「われはこれ鎮西のものなり。求法のために花洛にのぼる。仍って推参つかまつるものなり」と。そのとき聖人、「求法とはいずれの法をもとむるぞや」と。修行者申していわく、「念仏の法をもとむ」と。聖人のたまわく、「念仏は唐土の念仏か、日本の念仏か」と。修行者しばらく停滞す。しかれども、きと案じて、「唐土の念仏をもとむるなり」と云々 聖人のたまわく、「さては善導和尚の御弟子にこそあるなれ」と。そのとき修行者ふところより、つま硯をとりいだして、二字をかきてささぐ。鎮西の聖光坊これなり。この聖光ひじり、鎮西にしておもえらく、「みやこに世もって智恵第一と称する聖人おわすなり。なにごとかは侍るべき。われすみやかに上洛して、かの聖人と問答すべし。そのとき、もし智恵すぐれてわれにかさまば、われまさに弟子となるべし。また問答にかたば、かれを弟子とすべし」と。