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ること無くして疑惑せしが致す所なるなり。」
 仏、弥勒に告げたまわく、「譬えば転輪聖王に別に七宝の宮室有りて、種種に荘厳し牀帳を張設して、諸の繒旛を懸けたらんが如し。若し諸の小王子有りて、罪を王に得れば、輒ち彼の宮中に内れて、繫ぐに金鎖を以てせん。飲食・衣服・牀褥・華香・妓楽を供給せんこと、転輪王の如くして乏少する所無けん。意に於いて云何ぞ。此の諸の王子、寧ろ彼の処を楽いてんや、不や」と。 対えて曰さく、「不なり。但種種の方便をして諸の大力を求めて、自ら免出せんと欲う」と。 仏、弥勒に告げたまわく、「此の諸の衆生も亦復た是くの如し。仏智を疑惑するを以ての故に、彼の宮殿に生まれて、刑罰、乃至一念の悪事有ること無し。但し五百歳の中に於いて三宝を見たてまつらず、諸の善本を供養し修することを得ず。此れを以て苦とす。余の楽しみ有りと雖も、猶し彼の処を楽わず。若し此の衆

漢文

此人。宿世之時。無有智慧。疑惑所致。
仏告弥勒。譬如転輪聖王◦別有七宝宮室◦種種荘厳◦張設牀帳◦懸諸繒旛。若有諸小王子。得罪於王。輒内彼宮中。繫以金鎖。供給飲食◦衣服牀褥◦華香妓楽。如転輪王。無所乏少。於意云何。此諸王子。寧楽彼処不。対曰不也。但種種方便。求諸大力。欲自免出。仏告弥勒。此諸衆生。亦復如是。以疑惑仏智故。生彼宮殿。無有刑罰◦乃至一念悪事。但於五百歳中。不見三宝。不得供養修諸善本。以此為苦。雖有余楽。猶不楽彼処。若此衆生。識其本罪。深自悔責。求離彼処。即得如意。往詣